滋賀県内で活動する団体に、コープしがが活動資金を助成します。

できるコトづくり制度

滋賀県内で活動する団体に、コープしがが活動資金を助成します。

2025.09.26

活動報告

「地域の福祉輸送を支えるヒトとできるコトを増やすプロジェクト」太陽十月

2025年8月27日、NPO法人太陽十月(たいようとつき)の事務所(滋賀県湖南市)に伺いました。この団体の「地域の福祉輸送を支えるヒトとできるコトを増やすプロジェクト」は、できるコトづくり制度の「はじめて助成」1年目の活動です。
 
太陽十月がめざしているのは、湖南市市内の福祉有償運送事業を行うことです。
  
  
福祉有償運送は、高齢者や障がい者など、公共交通機関の利用が困難な方を対象に、ドア・ツー・ドアの輸送を行います。一定の要件を満たしたNPO等が、自家用自動車を使用してお送りすることができます。
   
運転者は福祉有償運送運転者講習を修了した人や、ヘルパー等の資格を持っている人です。車種によっては車椅子のまま乗車できるなど、頼りになる運送手段です。
  
この写真は車椅子乗降介助の練習風景です。(太陽十月提供)
  
太陽十月の活動のようす画像 車いすの方を乗車させる訓練の場面 
  
2025年8月25日に湖南市で開催された福祉有償運送運転者講習にて、メンバー2名が講師の久野 香菜さんより指導を受けている様子です。
この写真で、福祉有償運送事業がどのようなものか、イメージしやすいのではないでしょうか。
  
太陽十月の活動のようす画像 事務所
   
こちらが太陽十月の事務所です。
  
この日は営業企画部 マネージャーの薮内遥さん、代表理事の福西愛実さんと鈴村ミユキさんが、出来上がったばかりのユニフォームで出迎えてくださいました。
 
少しして、同じく福祉輸送を行っているNPO法人アザレアの統括理事、そして一般社団法人 滋賀福祉輸送協会の代表である高畠信也さんと、職員の久野香菜さんも参加されました。
 
太陽十月の活動のようす画像 メンバー3人とアザレアの高畠さん 
 
2024年7月12日にNPO法人を設立した太陽十月ですが、既に福祉有償運送運転者講習を修了しているメンバーもいます。同じ湖南市で活躍されている先輩のNPO法人アザレアに習い、経験を積んできました。
 
今回のできるコトづくり制度の助成金は、まだ資格のないメンバーや、さらなる技能向上を目的とした福祉輸送に係る資格取得費として使われます。
今後は太陽十月として独立して営業を開始できるよう、頑張っておられます。
 
 
薮内遥さんに、この活動を始めたきっかけを教えてもらいました。
 
 
「私の子どもが医療的ケア児だったのですが、生まれてから初めて退院が叶いそうだった時、病院から自宅に連れて帰る際は、家族が運転をすると聞きました。同時にその車の中で亡くなってしまう可能性もあると言われました。子どもは病院の外に出たことはなく、運転も医療的ケアも自分たちで行わないといけず、正直とてもこわいと思いました。家に連れて帰りたい気持ちがある一方で、落ち着いて看取ることができず後悔をしてしまわないかという気持ちもありました。今思えば、当時は恐怖心が強くて気持ちの整理がつきませんでした。退院に向けて医療的ケアの手技を学びながらもずっと悩んでいました。しっかりしないとという気持ちの裏で、泣いてばかりいました。その後、容体が悪化し連れて帰るという選択は難しくなりました。あの時の無力感、情けなさが原動力になっていると思います。
 
その後、以前の勤め先でお世話になった高畠信也さんに福祉のことを教わりたいと思い、数年振りに連絡をしました。実際に資格を取って福祉輸送を経験してみると、利用者の皆さんからとても感謝されるので、楽しく仕事ができるようになりました。」
 
太陽十月の活動のようす画像 救急用のユニフォームを着た高畠さん 
 
アザレアでは、さまざまな種類の運送を行っているそうで、この水色のユニフォームは患者等搬送事業(民間救急)の時に身に着けるものだそう。
 
「救急安心センター事業 #7119(シャープ7119)というしくみがあります。しかし、滋賀県はまだ民間救急と#7119の連携ができていません。滋賀県でもやりたい。そういう分野にもこれから太陽十月も入ってきてほしいと思っています。」と高畠信也さんはおっしゃっていました。
 
そして、薮内さんの祖母、今年の12月で90歳の伊地智きぬ江さんにもお話を聞きました。きぬ江さんは現在、要支援者で福祉有償運送の利用者です。
 
太陽十月の活動のようす画像 利用者でもある、薮内さんの祖母の伊地智きぬ江さんと薮内さん 
 
薮内さんは「私が主な介護者なので、祖母が通院している間は働けません。その間も仕事をしたいという気持ちがありました。福祉有償輸送の仕事を始めてから、祖母が病院に通いやすくなりました。」というのも、家族には遠慮してしまって、病院に行きたいとなかなか言い出せなかったというのです。福祉有償運送で出かけられるようになって、膝の手術にも踏み切ることができ、外出時に車椅子に乗らなくてもよくなり生活の質が上がったそうです。これには驚きました。
 
「それに、いろんな人に会えるから楽しいみたいです。運転者とも顔なじみになり、会話をするので気分が上がるみたいです。」と薮内さん。
 
そして、もう一組、利用者のご家族が来てお話してくださいました。
 
安井滋昭さんと、安井藤子さん親子です。
 
太陽十月の活動のようす画像 利用者の安井滋昭さんと、安井藤子さん親子 
  
藤子さん「栗東市の病院まで月に一回アザレアを利用しています。ずっと自分で車を運転していましたが、高齢になって運転の安全性を考えるようになり、湖南市のサポートセンターから紹介してもらいました。アザレアは10年以上利用しています。
 
いつも行く病院は、公共交通機関だと難しい。若い頃は湖南市の石部から栗東市の金勝(こんぜ)まわりでバイクで行っていたんですよ。もし、福祉有償運送がなかったら困ります。アザレアがなかったら、どうしようと思います。とても助かっています。」
 
滋昭さん「病院以外だと作業所見学の時に乗って行きました。バスの便数が減ってしまったので、以前通っていた作業所には自分一人では通えなくなりました。他市の作業所まで通ってるのはどうして?と思われるかもしれませんが、今通っている作業所には送迎があるから通えるのです。」交通手段が生活に大きく響いてくるのですね。
 
太陽十月の活動のようす画像 買い物支援の実証実験のチラシ 
  
このチラシのように、現在(2025年9月1日~12月27日)一般社団法人滋賀福祉輸送協会(委託NPO法人アザレア)ではライドシェアの実証実験を行っていています。予約をすればイオンタウンまで買い物支援が利用できます。病院以外にも使えると、生活の行動範囲が広がりますね。
 
太陽十月は、できるコトづくり講座を受講したのがきっかけで、NPO法人を設立して活動している団体です。
 
太陽十月が目指している福祉有償運送を開始するためには、これからいくつもの難関をクリアしなければならないそうです。それでも地域の方の生活の質の向上のため、焦らず長く継続して活動してくださることを期待しています。